将棋棋士の渡辺明棋王の著書「勝負心」を読んだ感想を書いてみました。
勝負心の概要
本書は、2013年11月に出版された本です。
渡辺棋王が10連覇に王手をかけた竜王戦がはじまる前の事です。
はじめて竜王のタイトルを獲得した2004年の竜王戦(対森内俊之竜王(当時))、永世竜王の有資格者をかけた2008年の竜王戦(対羽生善治名人)の対局を中心とした、渡辺棋王の勝負に対する考え方が記されています。
勝負心を読んだ感想
勝負心を読んで印象に残った箇所の感想について記してみます。
- ブラックホールのような羽生世代との戦い
- 随所に競馬愛
- プロ棋士は研究が仕事、対局は集金
ブラックホールのような羽生世代との戦い
第3章の「羽生世代との戦い」では、恐ろしい記述がなされていました。
事実、羽生世代より上の棋士たちは、わずかな例外(谷川九段のような)を除いて、みなこのブラックホールに呑みこまれてしまった。(p.68)
羽生さんが生まれた1970年と同世代の棋士に、森内俊之九段、丸山忠久九段、郷田真隆王将、藤井猛九段といったトップで活躍されている方々が揃っています。
当然、渡辺棋王も羽生世代との対局が数多くあるわけですが、その中でも対局中は楽しいかという問いに対しては、「楽しいわけがない」そうです。
シビアな世界であるという事を痛感させられる答えです。
随所に競馬愛
竜王戦をはじめとする数々の重要な対局前の心境が述べられているのですが、その際によく出てくる話題として「競馬」があります。
渡辺棋王は競馬ファンである事は有名ですが、重要な対局の前でもリフレッシュする意味で競馬を楽しむという事でした。
佐藤康光九段に言わせると、「信じられない」そうですが、対局への入念な準備があってこその渡辺棋王独自のリフレッシュ方法であると思いました。
「競馬がリフレッシュの源」とすぱっと言い切れるのがまた良いですね。
プロ棋士は研究が仕事、対局は集金
第4章の「すべて実力」では、渡辺棋王のドライな考え方が染み渡っています。
例えば「ゲン担ぎ」なんてものはしない派ですし、「ツキ」は関係ないとも断言しています。
インタビュアーとしては満足出来ない解答になっているかもしれませんが、この価値観こそ渡辺棋王の強さの秘訣でもあり、私がファンとなる所以でもあります。
対局前の入念な研究が大きく勝敗を分ける事が述べられています。
その中の一節で、紹介されていた森下卓九段の言葉がこちら。
プロ棋士は研究が仕事、対局は集金。(p.107)
棋士という仕事をうまく捉えた表現と渡辺棋王は評しています。
一般的には対局が仕事と思いがちですが、なるほどこの言葉を聞いて腑に落ちました。
対局するたびに対局料が支払われるので、これを集金と表現する所が面白いですね。
まとめ
渡辺棋王の勝負に対するシビアな考え方と競馬愛が詰まった一冊でした。
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